Serenity Forgeは、Twin Otter Studiosが手がけるタクティカルRPG『Arcadian Atlas』をPC(Steam)向けに2023年7月28日に配信開始しました。
本作は『タクティクスオウガ』『ファイナルファンタジータクティクス』『ヴァンダルハーツ』など、1990年代の作品にインスパイアされた作品。王の死によって深刻な継承問題を抱える地「アルカディア」を舞台に、数奇な運命に巻き込まれた2人の恋人を中心とした物語が描かれます。
本作は2016年にKickstarterキャンペーンを開催して9万ドルの目標を達成しました。2020年には新型コロナウイルスの影響もあり資金面を含めて開発が難航したものの、2021年にパブリッシャーSerenity Forgeと提携していたことを正式発表。同年から支援者向けのベータ版を提供し、ついに正式版を迎えた作品です。
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本稿では『Arcadian Atlas』のプレイレポートをお届けしていきます。
継承問題に揺れる国で語られる2年間の出来事
作の舞台となる「アルカディア」では、病気によって死んだ王の後継を巡った継承問題が発生しています。現在は王の妻である女王・ヴェネツィアが絶対的な権力を握り、一方で王の子供達は王位にふさわしくないと女王に断じられ、各々が野望を秘めている状態です。
そして本作の主人公となるヴァシュティとデズモンドの2人は、続く戦火の中で絆を結びやがて恋人となった戦士たち。ゲームの冒頭では現在の国の情勢と2人の数奇な運命が語られ、最初にチュートリアルとして女王候補・ルクレティアからなにかを託されたヴァシュティと騎士・エダを操作する戦闘が発生します。
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この戦闘では基本的にNPCが強いので基本的な移動や軽い戦闘くらいしかやることもなく勝利したものの、王女派の2人(1人は影武者)は女王派の騎士によって襲われてしまいます。場面は代わり、ヴァシュティ(本物)とデズモンドの2人が会話シーンへ。仕えている主人が異なり、恋人であっても密かに会わなければならないようです。
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ここで序章は終わり、物語は2年前へ。王の死が迫る中で国の実権を握っている女王に、ルクレティアは彼女が毒を盛ったと主張して追われる立場に。その妹・アナリスは修道院に送られる事が決まっていて、ヴァシュティとデズモンド、エダはその護衛に付くこととなります。
冒頭から駆け抜けるように継承問題が発生し、その問題はあまりにも根深いアルカディア。本作のメインストーリーは、2年前から現在までの出来事を中心に、数奇な運命に巻き込まれた人々の物語が描かれていきます。
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テンポが早くオーソドックスな戦術SLG
本作の戦闘は、いわゆる『タクティクスオウガ』系の高低差のあるマップで行われます。ゲームとしては比較的オーソドックスなスタイルで、順番が来たキャラを操作しながら敵を全滅させればマップクリアとなります。特徴としてマップサイズ自体が小さめで、両軍ともに出撃メンバー数はおよそ5人から6人くらいの規模です。
プレイヤーは4種類のクラスで構成された部隊からメンバーを選出して出撃します。ヴァシュティとデズモンドはどちらも騎士職で近接攻撃メイン、エダは回復や属性攻撃をこなす薬剤師のため、序盤は自然と遠距離攻撃が得意なキャラクターを使用することになると思います。
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戦闘中、キャラクターのターンが来たら「移動・アクション・待機」を行います。アクションは通常攻撃のほか、SPを消費して発動するスキルがあり、状況に応じた使い分けが重要です。また、クロスボウでの攻撃や一部の呪文は発動ターンと実行ターンに分かれています。
属性による組み合わせがあったり、攻撃時に敵を移動不能やスタンさせる追加攻撃があったりと、スキルによる攻撃はいずれも強力です。ちなみにキャラクターのHPが0になったら3ターン以内に蘇生しなくては死んでしまうのですが、薬剤師の「蘇生ポーション」は1戦闘で1度しか使用できません。
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戦闘のペース自体はかなり早く進行していきます。戦闘開始時にキャラクターを配置するのですが、位置によっては敵の始動ターンで遠距離攻撃を受けることも珍しくありません。ゲーム内では味方を回復する手段があまりなく、配置時点では敵の初期位置がわからない仕様のため注意が必要です。
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世界をめぐり部隊を育てよう
本作のレベルアップは少し特殊なもので、戦闘に出撃させたユニットが終了時にレベルアップおよびスキルポイントを獲得するというもの。スキルはアクティブとパッシブの2種類があり、移動力アップや体力アップなど一部のパッシブスキルは専用のスロットに装備することで効果を発揮します。
パッシブはいずれも強力ですが、ゲーム内で一度に出撃できるユニット数(レベルアップできるユニット)が少ないため、あまり多くのユニットを同時に育成するのは難しい印象です。ですが、店で雇用できるユニットは部隊に合わせたレベルなので、メンバー編成自体は難しくありません。
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本作の戦闘クラスは初期で4種類のほか、スキルポイントを一定以上使用することで上級クラスにアップグレードすることも可能。もちろんスキル育成だけでなく、ショップで武器や防具を新調するのも重要です。アクセサリーによっては地形移動などで大きな効果を発揮するため、クラスと組み合わせで大きな効果を発揮します。
また、ヴァシュティやデズモンド、エダ以外にもストーリー上でユニークユニットも。最初に加入するユニークユニットが「魔法の薬の効果で人間のようになったアライグマ」なのですが、このゲームで優秀な遠距離職なのでとても頼りになります。
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スキルによって同じ戦士職でも両手剣で攻撃重視・片手剣&盾で防御重視など、さまざまな方向性の育成が可能です。バランス型のユニットを作るのか、特化したユニットで部隊を組むのか、プレイヤーごとの戦略も問われます。
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日本語翻訳やAI挙動など惜しい部分も……。
ゲームとしてはオーソドックスなタクティカルRPGのを楽しめる本作なのですが、実際にプレイしているといくつかの不満点も感じます。まず顕著なのが翻訳の質です。これは現時点ではっきりと機械翻訳のような内容で、ストーリーが分からないような会話シーンも珍しくありません。
敵のAI挙動も一部おかしく、薬剤師が体力が減っていない仲間を回復してSPを無駄に消費することも。また、せっかく高低差のあるマップなのですが、あまり攻撃に関して高低差の恩恵がなく、こちらが高い場所にいるのに下から弓矢やポーションで狙われることも珍しくありません。
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そして一番の不満点として「マップが回転できないこと」があります。筆者は今回マウスでプレイしたのですが、ステージによってはマップのマスの一部が障害物でほとんど見えないことがあります。カーソルで指定できる範囲が少なく、移動したい場所になかなか行けないのはとてももどかしく感じます。
こういったUIに関する不満としては、戦闘マップで他のユニットのHP/SPがすぐわからない、マップ上で街の施設を開くためにクリックする範囲が狭すぎるなどの部分も。UIや翻訳に関しては今後の改善に期待したいところです。
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ここまで紹介してきた『Arcadian Atlas』。タクティカルRPGとしての要素はしっかりと備えているものの、不自然すぎる翻訳やUIの不備、AIの挙動などでどうしても遊んでいて「もう少し改善して欲しい」と思わされる部分が多めです。
もちろんコンパクトでテンポの良い戦闘、同じクラスでも方向性の違う育成ができる点、ピクセルアートなど、このゲームならではの良い部分もあります。ただし、正直なところ現時点では不満点のほうが多くなってしまうかな、というところがあります。
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せっかくの世界観が日本語翻訳で台無しに。光る点はあるけど改善してほしい部分が多すぎるスパ……。特にマップは回転させて欲しい!!
タイトル:『Arcadian Atlas』
対応機種: PC(Steam)
記事におけるプレイ機種: PC(Steam)
発売日: 2023/07/28
価格: 4,245 円