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『Starfield』月旅行にドライブはいかが? 日本が作る完成間近の新型月面車【ゲームで世界を観る#86】

月面のドリフト痕は100年経っても消えることはありません。

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『Starfield』月旅行にドライブはいかが? 日本が作る完成間近の新型月面車【ゲームで世界を観る】
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宇宙の密度は「太平洋にスイカ3個」などと例えられることがありますね。『Starfield』の宇宙は重くて広大なリアル寄りのデザインを採りましたが、いかんせん広すぎて移動が大変です。8月のアップデートでは地上探索用の車両「REV-8」が登場し、移動時間を大きく短縮できるようになりました。武装も付いていて不意の襲撃にも対応可能です(本音を言えば何故最初以下略)。


惑星上の調査にはいろいろ手段はありますが、莫大な予算を掛けて着陸した周辺しか観測できないのはやはり効率が悪いので、どんなに大荷物であっても車一台を送り込めれば、そのコストを遙かに上回る量のデータが得られます。有人の乗り物としての車でなくても、現在火星で稼働中の「パーサヴィアランス」「キュリオシティ」などの無人探査機も無人車ですし、その成果がめざましいものであるのは皆さんもご承知の通りです。

John Young Driving the Lunar Rover

宇宙の車というとやはりアポロ計画の「LRV(Lunar Roving Vehicle)」ですね。1971年のアポロ15号で初めて搭載され、17号まで計3台が月面に送り込まれました。外枠もなくカートのようなほぼ最低限の機構ですが、極度環境でも無事に帰ってくることが何よりも重要でした。もしも宇宙船から遠く離れた場所で故障したら……想像するだけで目眩がしてきますね。

『グランツーリスモ6』のスペシャルステージではLRVに乗って、アポロ15号のミッションを追体験することができました。実はそれ以前の1970年にソ連の無人探査車「ルナホート」が到達していて、車の世界初はソ連、有人走行の世界初はアメリカになっています。ムーンレースにかけた両国の意地が垣間見られますね。月面に残された車と走行痕は近年の調査でも確認されました。

Apollo 17,Lunar Roving Vehicle and Astronaut Harrison Schmitt during EVA 3

地球以外の星を走るというのは、地球上の常識が通用しない未知との遭遇でもあります。第一に重力から異なりますし、大気と水に練られた地面の質も違います。単純に地球と同じ仕組みでやれば良いというものではありません。

月には物体を動かす刺激がほとんどないので、一度落ち着くと数百年経とうがその場から動くことはありません。そのため、月の表面は粉状の砂粒「レゴリス」が降り積もった状態です。レゴリスは静電気を帯びていて、宇宙服や車体にまとわり付く非常に厄介な性質があります。故障や塵肺など悪影響はいろいろありますが、車の走行に関しては滑りやすく埋もれやすいのが困りもの。重力が小さいので重さで摩擦を高めることも難しいです。

そこで、アポロが採用したのはゴムタイヤではなく、亜鉛コーティングのメッシュでできたタイヤでした。レゴリスを掻くのに特化し、空気で膨らませているわけではないので、写真をよく見ると内側や向こう側が透けているのが分かります。アポロ17号のミッションではLRVで大量の月の石を持ち帰りました。

1972年のアポロ17号を最後に有人宇宙探査は途絶え、探査の重点も水と大気がある火星へと移り、今世紀に入るまで月探査は優先度が大きく下がっていました。21世紀になると欧米に加えて中国とインド、そして民間企業が宇宙開発に参入し、本格的に有人宇宙開発が始まりました。NASAによるアルテミス計画ではもう来年には有人月周回、2026年に月着陸を予定しています。日本からも2人宇宙飛行士を派遣し、アメリカ人に次いで2番目の国になるとされています。

それに伴い、次世代型の月面車「ルナクルーザー」をJAXAと日本企業の共同で開発しており、2031年の投入を目指しています。宇宙服のまま乗っていたアポロ世代とは異なり、車内で最大30日間生活しながら走行できるように空気が入ります。車体全般はトヨタが請け負っていて、キャンピングカーのようなキャビンを備え、なんとシャワー付き。自動運転も搭載予定です。タイヤ部分はブリヂストンが担当し、鳥取砂丘に設置された「ルナテラス」にて実証試験を実施中。「いつか行く」の段階はとうに過ぎて「いつ行けるか」のところまで日本も追いついているのです。

これからの宇宙は「冒険の舞台」ではなく、仕事と生活の場所になる。安全に、着実に、快適に。地球にある当たり前を空の向こうへ持っていくために、車はこれから大きく進化を遂げようとしています。あなたは宇宙でどんな車に乗りたいですか?


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