
『ディスコ エリジウム』で高い評価を得たZA/UMが新作『C4』(仮称)を発表しました。メディア向けに行われたプレゼンテーションにて明かされた本作は、スパイ活動を題材にした完全新作で、「失敗」を重要な要素として取り入れた意欲的な作品になるようです。
「失敗を後押しさせる」新しいゲームプレイ

『C4』の特徴的な要素は“failing forward(失敗を後押しさせる)”と呼ばれる仕組みです。従来のRPGでは失敗がゲームオーバーやリロードにつながりましたが、本作では失敗自体が新たな展開を生み出す要素として機能します。例えば、尋問に失敗しても別のルートで情報を得られたり、失敗から予期せぬ展開が生まれたりする可能性があります。
プレゼンテーションに登壇した『ディスコ エリジウム』のリードボイスオーバーディレクターを務めたJim Ashilevi氏は「私たちは、他のゲームが否定するかもしれないプレイヤーの選択を正当化し、失敗自体を喜びにします」と説明しました。
『C4』は『ディスコ エリジウム2』ではない

ZA/UMは過去5年間『ディスコ エリジウム』のコンソール移植やローカライズを進める一方で、新たな試みと実験を重ね、新メンバーを迎えて拡大したチームでは長期的なゲーム開発を可能にする体制を築き上げてきました。
プレゼンテーションで念を押されたのが、『C4』は『ディスコ エリジウム』ではないという点です。過去3年間をかけて開発された本作は、スタジオメンバー全員が魅了されているテーマ「スパイ活動」に焦点を当てた、完全なオリジナル作品となります。
スパイ活動といっても『C4』は007シリーズのようなヒーロー性や派手なガジェットではなく、海外ドラマ「窓際のスパイ」に近い現実的な諜報活動を描くようです。『ディスコ エリジウム』プロデューサー兼ライターのSiim Kosmos Sinamäe氏は「『C4』に名声やパレードはなく、ただ愛する仕事をこなすだけ。ヒーローはいません。ただ失敗の臭いだけがあるのです」と硬派なデザインを匂わせていました。
そして「裏切りは愛があってこそ可能になる」という考えが、『C4』のストーリーの核心にあるようです。プレイヤーは友人への忠誠、任務への義務、そして個人的な悪癖の間で、相反する忠誠と道徳的にグレーな選択のバランスを取ることを余儀なくされます。これらの選択は物語に具体的な影響を与える、という発言もありました。
『C4』制作の多様なインスピレーション源

プレゼンテーションではZA/UMが、『C4』を制作するうえで参考にした小説や映像作品なども展示されました。ゲームプレイは公開されずじまいだったので、『C4』がどのようなゲームになるかは現時点ではまるで想像もつきませんが、参考作品からは『C4』への期待が高まります。
スパイ作品を描くうえで、スパイ小説ではイギリスの作家ジョン・ル・カレの作品、特に「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」は、ゲームの複雑なプロットと緻密なキャラクター描写の基盤を提供し、大きな影響を与えているといいます。

また、ZA/UMらしいサイケデリックな世界観を描くうえで、開発チームはアーシュラ・K・ル=グウィン、フィリップ・K・ディック、スタニスワフ・レムといった作家から着想を得て、人間の意識の境界と、欺瞞の世界における人間の意味を探求。映像面ではパク・チャヌク監督の映画(「オールド・ボーイ」「別れる決心」など)の「人間的に地に足がついた、しかし古典的に構成された」アクションシーンや、フランスのテレビドラマ「Le Bureau」における諜報活動の描写もゲームのデザインに影響を与えているようです。
開発チームは重厚なテーマを扱いながらも、「これは結局のところビデオゲームであり、愚かで無邪気な楽しさを提供するものです」と述べており、シリアスさと娯楽性のバランスを重視していると語られました。
『C4』の続報は今後のGDCで明らかにされる予定。発売時期やプラットフォームについては、現時点で未発表となっています。