一度生まれたミームは、そう簡単には死なない?―配信開始に合わせ注目された『アーマード・コア』初期3部作におけるキャッチコピー、その初出を調査! | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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一度生まれたミームは、そう簡単には死なない?―配信開始に合わせ注目された『アーマード・コア』初期3部作におけるキャッチコピー、その初出を調査!

キャッチコピーの元ネタはまさかの「ネットのコピペ」……なのか?

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一度生まれたミームは、そう簡単には死なない?―配信開始に合わせ注目された『アーマード・コア』初期3部作におけるキャッチコピー、その初出を調査!
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2025年3月18日、フロムソフトウェアはPlayStation StoreにてPS1でリリースされた『アーマード・コア』初期3部作の配信を開始しました。過去ハードでしか遊べなかった『アーマード・コア』シリーズが遊べることもあり、多くのファンから喜びの声が上がりました。

そんな中『アーマード・コア』のキャッチコピーに対して、とある話題が注目されています。

◆『アーマード・コア』初期3部作のキャッチコピーは「ネットのコピペ」……?

話題の発端となったのは、とあるXユーザーさんがつぶやいた「今回の配信ページで使われている『アーマード・コア』初期3部作の副題は、自分が酔った勢いで2013年頃に2chへ投稿した半捏造の副題が元ネタだと思う」という投稿です。編集部で実際に2chの過去ログを探してみると、下記のような書き込みが見つかりました。

「必死チェッカーもどき」より引用

さらに、フロムの公式サイトにある歴代『アーマード・コア』シリーズのラインナップページには、下記のようにこの書き込みと一致する副題が掲載されています。

・『アーマード・コア』→「原始の記憶、鋼の監獄 - 究極の強化人間」
・『アーマード・コア プロジェクトファンタズマ』→「背徳の技術、ヒトの超越 - 最強の非道兵器」
・『アーマード・コア マスターオブアリーナ』→「二つのペルソナ、一つの悪夢 - 殺したい男がいる」

遊び心に溢れるフロム・ソフトウェアのこと。ファンメイドで作られたキャッチコピーを公式が逆輸入する、というのはなんだかありえそうな話ではあります。また、古参レイヴンらしき方からも「確かに副題なんか無かった気がする」「当時から『あったか?』と思ったんだよなぁ……」という声が出ていました。

なんとも興味深い今回のお話。その真偽を確かめるべく、フロム・ソフトウェアの公式サイト等を参照してみました。

◆当時の説明書などにはキャッチコピーに該当する記述はなし

『アーマード・コア』取扱説明書より引用

有力な手がかりとなるのが、フロム・ソフトウェアが公式サイトで配布している「取扱説明書一覧」。ここにはリリースされた『アーマード・コア』 『アーマード・コア プロジェクトファンタズマ』『アーマード・コア マスターオブアリーナ』の発売当時の説明書が掲載されています。

しかし、こちらには該当するキャッチコピーの記載がありません。また、動画サイトなどに投稿されているかつてのCMや店頭PVなどを参照しても、やはりキャッチコピーに該当するようなセリフや文面は見つかりませんでした。

他の『アーマード・コア』シリーズのキャッチコピーを確認して見ると、このコピペと一致するキャッチコピーが出てくるのは、2002年に発売された『アーマード・コア3』からです。各種オークションサイトで『アーマード・コア3』の店頭向けらしきポスターを確認すると「その世界に、空はなかった。」という文面がありました。

歴代『アーマード・コア』シリーズのラインナップページより引用

しかし、後半の「-アースダイバー-」という記載については見つかりません。また『アーマード・コア フォーアンサー』のキャッチコピーとして書き込まれている「その先に、答えはあるのか」は、公式サイト等によれば「この戦いの向こうに、答えはあるのか」となっており、細かい違いがあります。

歴代『アーマード・コア』シリーズのラインナップページより引用

さらに、詳しい編集部員によれば『初代ACの設定資料集にも、該当するキャッチコピーはない』『AC3にも「アースダイバー」という単語はなかった気がする』『小説版にも見当たらない』という情報が寄せられました。

◆まさかの「元ネタ=コピペ」になるかと思いきや……

とはいえ、『アーマード・コア』初期3部作発売当時の説明書やポスターなどからはキャッチコピーに関する情報がないのは事実のようです。また、前述した『アーマード・コア』シリーズの情報が公式で出てきたのも、2022年12月頃のようです。

こうなってくると、やはり「フロムの遊び心なのでは……?」と思えてきます。しかし、ここで『アーマード・コア』初期3部作のキャッチコピーを、Xの過去検索で探してみました。

すると、このコピペより古い2011年や2012年に「原始の記憶、鋼の監獄」「二つのペルソナ、一つの悪夢」などとつぶやいているXアカウントが複数ありました。書き込みによっては「鋼の監獄、世界の起点」など表記揺れはあるものの、内容的にはかなり似通っており、コピペの元ネタがありそうな雰囲気を感じます。

いずれにしても匿名掲示板を含め今回の調査範囲では2010年2月頭が「AC初期作のキャッチコピーとされるもの」の最古のログとなりました。

◆調べることで謎の深まった元ネタ論

ここまで出てきた情報をまとめると、

・今回配信された『アーマード・コア』初期三部作の副題には、まとめコピペと同じ文面が使われている
・これら『アーマード・コア』の副題は、発売当時のポスターや説明書、PV等では確認出来ない
・その一方、まとめコピペができる前の2010年頃からかなり似た同じ文章を投稿しているユーザーもいる

ということになります。


非常に個人的な推察をすると、当時はフロム・ソフトウェア主催による『アーマード・コア』大会があり、コアなファンの間では人気を博していました。また、ゲーム雑誌等も元気な時代ですので、その辺りでシリーズの特集記事が出た可能性もあります。

それらを鑑みると、外部で使われ始めた言葉がファンや関係者の間で定着。最終的にはキャッチコピーという扱いでまとめコピペに取り込まれ、関係各所に広まっていったのではないか?と思っています。

もちろん、初期作品部分については匿名掲示板に書き込まれたファンによる創作が、そのキャッチコピーとしての真偽が不明のまま不特定多数の手による改稿を経ながら広まっていった可能性も否定はできません。その視点で見た場合は、初期作品部分のキャッチコピー全体には特に『アーマード・コア4』『アーマード・コア フォーアンサー』で醸成されたシリーズの雰囲気に寄せた部分が見られており、2006~2010年ごろにその原型が広まったものである可能性が濃厚ではないでしょうか。

読者の方で情報お持ちの方、もしいらっしゃいましたらコメント欄等でお知らせください。

ライター:鈴木 伊玖馬,編集:Akira Horie》

ライター/ゲームと乗り物の記事を書いてる 鈴木 伊玖馬

名古屋県生まれ。幼少期に『スターフォックス64』でゲームにハマり、学生時代に『CoD:MW』でFPSにハマり、そのままゲームから卒業できず今に至る。ここ数年でRPGにも手を出し、最近『ドラクエ6』をクリアした。中日ファン、犬派、後ゲームはオフラインでやるタイプ。デカい航空機にはロマンを感じる。

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Akira Horie

編集/『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam/Nintendo Switch好評発売中! Akira Horie

Game*Spark副編集長。平日日中のニュースデスクおよび料理連載や有志翻訳者連載の基本担当。 2021年版以降の『ウィザードリィ外伝 五つの試練』イード側のディレクターも兼務中。

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