色彩豊かに描かれる不協和音のような世界! “信頼できない語り手”が不安をもたらす『Anomalistic Revolution』【TIGS2025】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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色彩豊かに描かれる不協和音のような世界! “信頼できない語り手”が不安をもたらす『Anomalistic Revolution』【TIGS2025】

悪夢と現実の狭間がなくなったかのような不安感をあおるトルコ産RPG。

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色彩豊かに描かれる不協和音のような世界! “信頼できない語り手”が不安をもたらす『Anomalistic Revolution』【TIGS2025】
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3月8日から9日にかけ、吉祥寺にて「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT2025(TIGS2025)」が開催されました。本記事ではその中に出展されていたRPG『Anomalistic Revolution』レポをお届けしていきます。

Umigame Studiosが手掛けた『Anomalistic Revolution』はトルコ発のRPG。現実と夢を行き来する内容ですが、その境目があやふやになるかのような演出による不安感が印象に残った一作です。今回はなんとトルコから来日し、会場に来ていたUmigame Studiosのメンバーから開発にまつわる話も伺えました!

◆名前からして不穏なソフトウェア「truu crafter」…悪夢と現実の狭間がなくなったかのような不安感

本作のプレイフィールを先に述べると、カラフルな色彩に彩られた「悪夢的な世界」が強く印象に残ります。おそらく「精神的な不安感」が主軸となる作品でしょう。

たとえば、主人公は全ての質問に的確に返答するというソフトウェア「truu crafter」のプロトタイプを開発した人間ですが、同時に「その開発は上手くいかないはず」と糾弾され、「開発の栄光」どころか「頓挫に近い不安感」を味わってメンタル崩壊寸前の状態から物語がスタートするのです。

さらに主人公を責め立てるのは、パートナーと破局寸前の修羅場(主人公は別れたと思っている)であるという状況。彼はゲーム開始時に「別れたパートナーと住んでいた家に、残されたケーキを食べに戻る」という謎の行動を取っており、もうかなり精神が追い詰められていることがわかります。

家には愛猫もいるのに、帰った理由は「ケーキを食べ損ねてたから」。

文章にするとかなり支離滅裂な冒頭に見えますが、極彩色で彩られた『Anomalistic Revolution』の世界では、この精神状態がすっと入ってきてしまうのです。

そしてADVパートでは、前述の万能ソフトウェア「truu crafter」プロトタイプを駆使して過去の記憶などを解き明かしていくわけですが、そもそも「crafter(創造者)」という名前が不穏ですね。 “true crafter”であるならば「真実を作る」ということで、「真実を解き明かしている」わけではありません。

主人公は精神が不安定で、「truu crafter」も名前からして怪しい。物語を紡ぐキャラそのものが信用できないという手法「信頼できない語り手」を、まさに地で行っているのが『Anomalistic Revolution』です。

その晩、主人公は「睡眠麻痺」あるいは「ナイトテラー」(俗にいう金縛り)に陥り、桜散る美しい通勤路で巨大なクリーチャーに追われるという悪夢をみます。ここではジャンプアクションが挿入されました。

このように本作のストーリーは、二重人格的な衝動すら発症している主人公の“一貫性のない行動”を基に進められました。まるでバラバラのパズルのピースを辿っているような感覚に襲われますが、実際にプレイしてみた感触としては、どこか『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』のような“一貫性のある不安定さ”を感じさせてくれます。そしてここから物語がどう展開していくのか、気になる所です。

さて、初の来日となるUmigame Studiosに今回TIGS2025に出展された理由を伺ったところ、本作が日本文化に強く影響を受けて作られたため、日本人のフィードバックやアイディアでゲームをより面白くしたいという回答が得られました。

確かに作中で映される(悪夢の中の)街並みや、イラストのテイストはかなり日本チック。しかし同時に、筆者はこの色彩感覚と精神的圧迫、つまりセンスに関しては日本の作品に中々ないモノを見ました。主人公の不安感が色彩で表現されている点が見事です。

ローカライズは「完璧な日本語ではない」と思いましたが、しかし不思議と、本作の悪夢的なバラバラ感と奇妙にマッチしている雰囲気も感じます。

ゲーム紹介文には「あなたは都市の中心にある穴の前に立っています。その後、あなたの視線はさらに深い、もっと恐れるべき虚無に向かいます」と、抽象的な文言が踊ります。

実際にこの穴が出てくるのか、それとも実生活に追われて落ちた狂気なのかは試遊の段階ではわかりませんでしたが、カラフルで悪夢的なビジュアルは充分に魅力的。気になる方は配信中のデモ版をプレイしてみるのもいいでしょう。


『Anomalistic Revolution』は現在デモ版を配信中。正式版は8か月以内にリリース予定とのことです。


ライター:高村 響,編集:TAKAJO

ライター/ゲームライター(難易度カジュアル) 高村 響

最近、ゲームをしながら「なんか近頃ゲームしてないな」と思うようになってきた。文学研究で博士課程まで進んだものの諸事情(ゲームのしすぎなど)でドロップアウト。中島らもとか安部公房を調べていた。近頃は「かしこそうな記事書かせてください!」と知性ない発言をよくしている。しかしアホであることは賢いことの次に良い状態かもしれない……。

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編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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