粗が目立つUI
あとに回してしまいましたが、最後に本作の基礎システムへ目を向けてみましょう。細かいところをつつくような話となってしまいますが、UIには使いづらさがどうしてもつきまといます。
メインメニューの上部には、それぞれの機能へアクセスするタブが用意されていますが、これが何故か回転式となっており「瞬間的に前の画面へ戻る」といった場合に、マウスでは直感的でなくなってしまっています(ブラウザのタブを選択すると毎回位置が変わる……と考えてもらえればその煩わしさも理解できるかもしれません)。
左から二番目は必ずインベントリだ……というような設計であれば迷うこともなかったのですが、このあたりはどうにも使いにくいです。
更に、アイテムの売買時に画面1ページ分以上の品を所持していると、売り買いが重くなってしまうのも調整不足を感じます。恐らくは売り買いをするたびにアイテムのソートをかけているような処理をしているせいなのではないかと思いますが、クラフトや解体を含めてアイテム量の多い本作は、思いのほかこれらの操作を行う機会があるので、地味にストレスが蓄積していきます。
アイテムのソート設定も保持されないので、装備中のアイテムがリストの途中に埋もれてしまい、一気に連打して売ろうにもマウス操作に気を使う必要が出てしまいます(装備中のアイテムは確認が出るので大きな問題にはなりませんが)。せめて装備中のアイテムは常に一番上へ持っていけるとか、そうした設定を組んで保持できるようにしてあればともう少し快適になったはずです。
クラフトのレベルを上げるためにはかなりの数の解体・制作をする必要がありますが、UIの軽快さはそれに見合っていません。2つ以上スタックしたアイテムを分解したり売ったりするときには「何個処理するのか」が表示されるものの、ニュッとアニメーションを要する表示で、かつマウスを使わなければ完結できません(筆者の環境ではTabキーで決定と表示されていますが反応してくれませんでした)。
処理するアイテムの数量・回数に対してはやはり操作量が多すぎることとなり、端的に言ってダルいです。Vの視界に表示されているHUDは良いデザインだと感じますので、メニュー画面が微妙に使いづらいのは残念でした。
また、役割が被ってしまっているキーがあり、意図せず暴発してしまう例もあります。会話をスキップするボタンとしゃがむボタンが何故か同じ(Cキー)に設定されており、こうしたオープンワールドFPSでありがちな「会話をするときについ座ろうとする」ことでスキップを発動してしまうのです。
筆者はキーバインドを変更し、会話スキップを別のボタンにしてみましたが、どうやら会話中(会話スキップが可能な間)はしゃがむことすらできないようで、ロールプレイとしてはぜひとも欲しいのだけどなあ……と感じていました。走るのではなく、歩くというキーもないので、重要な会話でもなんだか落ち着かないVとなってしまうのももったいないところです。
アイテムを拾うボタンと、会話やドア開けといったインタラクトのボタンも同一(Fキー)であり、誤爆する場面は少ないとはいえ気を使って操作する瞬間が出てきてしまいます。
ファストトラベル時も、マウスドラッグで地図を動かせるのですが、その際にファストトラベル地点を押し込んでしまうと、その瞬間に決定されてしまうというのも使いづらい点でした。マウスボタンを離した際に決定とするか、長押しか、または確認ウィンドウが出るかすればよかったかなと思います。WASDキーでも地図を動かせるので、事前に気をつけていれば回避は可能です。
一気に並べてしまいましたが、UIは再考の余地ありと感じます。『Skyrim』でも、もはやメジャーとなったUI変更Modが必須と言えるような状況になって久しいのですが、本作もそのような形で変化していくのかもしれませんね。
総評
高すぎた期待感との乖離、発売を優先せざるを得なかった経営陣の板挟み、高品質と低品質の同居、『サイバーパンク2077』を語るにはどうしてもどこか一つに視点を定めて、ある一面を切り取らねばなりません。それほどまでに本作のコンテンツ量は内外関わらず膨大であると言えます。
本レビューでは、ゲームメカニクスがどういったものかをまず解説した上で、TRPGやサイバーパンクやFPSといった本来的に「メジャー」ではない要素が、どのように「メジャー」向けとなったのかを示し、ハードコアなゲーマーの読者に対して評価を下す試みを行いました。
その結果、総合評価は★★☆とし、ハードコアなゲーマー諸氏におかれましては素直な気持ちでプレイされることを提案したく思います。この作品はオープンワールドとストーリードリヴンの両立という超高レベルの実現に挑んだものであり、結果として「メジャー」寄りの表現に見えることとなったのです。
高品質なディティール、野心的なプロジェクト、キアヌと乗れるジェット・コースター、ぶっ放したショットガンとともに飛び出すAI自動車との絆といった要素は、十二分に評価できると言えます。
多すぎる服飾アイテム、そのどれもがサイケデリックなのにクールだと感じられてしまうような作り込みは他にありません。できることならばPC版で最高のディティールを引き出して、そのディティールを味わいつくされますことを願います。
蛇足ながら、オープンワールドゲームとしてPC版の未来にModコミュニティが栄え、晴れて何年も遊び尽くせる価値を持つ「真のメジャータイトル」として育ちゆくことを願い、レビューの締めくくりとします。それでは
「また……メジャーで会おうぜ」
良い点
・ナイトシティ
・ゴロウ・タケムラ
・ジョニー・シルヴァーハンド
・ジャッキー・ウェルズ
悪い点
・荒いオブジェクト配置
・オミットされすぎたサイバー要素
・オープンワールドの悪い面が目立ってしまうこと
先のPS4版でもお伝えしたように通常1ゲーム1レビューというルールで運用しているGame*Sparkレビューですが、発売前にライター陣よりレビューを執筆したいという要望が多かったこともあり、1レビューで網羅的に本作を評価することに執着せず、複数のライターが多様な視点を伝える方向で調整していました。ハードを分けてレビューをする意図は当初ありませんでしたが、返金騒動などの事態を考慮し、PS4版、PC版とそれぞれレビューを出すこととしました。
プラットフォーム別で批評する場合、同じレビュアーが各プラットフォームでプレイし、統一の評価を出すのが筋だとも思いますが、よもやこのような事態になるとは発売前に想像もできなかったので、当初の企画意図通り、レビュアーの多様な視点で採点してもらうという前提は崩さず、編集部ではレビュアーの評価を尊重し一切手を加えていません。つまり、媒体としてPS4版とPC版とを比較してどちらの方が優れているかを評価しているわけではないということはご理解いただければ幸いです。
なお、