注意:本記事で紹介するDLCは、過去に発売されたDLCと同様にストーリー性の強い内容となっています。極力内容には注意を払っていますが、プレイレポという形式上、どうしてもネタバレとなってしまう部分もあります。ですので、事前情報無しのフレッシュなゲーム体験を考えている方は、現時点でブラウザバック等を行うことを強くお勧めします。
また、本稿の執筆に際しては開発版を使用しています。4月13日リリース予定の正式版とは内容が異なる部分もあるかもしれませんが、予めご了承下さい。
今回ご紹介するのは、SFファンなら知る人ぞ知るドイツのデベロッパーEgosoftが、日本時間2023年4月13日にSteam等にてPC(Windows/Linux)向けにリリース予定の宇宙シミュレーション『X4: Foundations』の第4弾大型DLC『X4: Kingdom End』です。
本DLCでは、同作世界で過去登場していたものの『X4』では行方知れずになっていた、待望のボロンがいよいよ本格的に登場。HQで一人寂しく研究に明け暮れていた、“ただ一人のボロン”ボソ・タ氏も、ジャンプゲートの遮断以降離れ離れになっていた同族との感動の再開を果たすことになります。
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ただ、同作を追ってきたファンが気になるのがボロンが水棲種族であることでしょう。某人型決戦兵器のようにコクピットが液体で満たされているとは言わないにしても、彼らの宇宙船がどのような構造になっているのか、また他種族の宇宙船をどのように操縦するのかなどなど、他種族とは全く異なるボロンだからこその疑問は多々あります。
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また、ボロンの温和な性格を反映してか、過去作ではボロンが主に製造し用いる装備はイオン系兵装による対シールド性能を重視したものとなっていました。本作では実装された艦船や武装がどのような味付けとなっているのかも注目したいところです。
さらに、本DLCの配信に際し本体のバージョンも6.00へと更新されます。今回の更新によりライティングなど各種表現や描写の強化のほか、ゲームの起動やセーブ、ロードの高速化など様々な改良や修正などが行われている点も見逃せません。
では、早速本題に入りましょう。
『X』シリーズとは
本DLCのベースとなる『X4: Foundations』は、ドイツに本拠地を置くデベロッパーEgosoftが手掛ける『X』シリーズの最新作です。
オープンワールドSFシミュレーションという長いジャンル名が示すように、広大な宇宙を舞台に、プレイヤーは1パイロットとして活動を開始することとなります。
『X』シリーズの魅力は、何と言ってもそのスケールの大きさと自由度の高さ。広い宇宙に放り出されたあとの振る舞い方はプレイヤー次第です。凄腕パイロットとして数々の戦場を駆け巡るのも、交易船を揃えて貿易会社を経営するのも、ガスや鉱石などの採掘業に勤しむのも、あるいは宇宙全域にステーションを建てて経済面で宇宙を支配するのも自由なのです。
そして資本を元に軍備拡張も行えます。偵察機からフリゲート、はたまた強大な戦艦までお金さえあれば購入できますし、場合によっては自力で建造することもできます。もちろん、敵対勢力を攻略するのも専守防衛を是とするのも、はたまた競合他社のステーションを壊しまくるのもいいでしょう。とにかくプレイヤーの思うがままです。
シリーズを通じて素晴らしい出来の経済シミュレーションでは、戦争などの外因を含む需要と供給などがしっかり反映されます。なので、自前の軍事力や破壊工作による “需要の創出”も重要となってきます。
全種族共通の敵なんてのもいますから、彼ら相手に最前線で戦い続ける伝説の英雄を演じるのもよいでしょう。自身が立つブリッジからの指揮に応じて後方の空母から続々と小型機が出撃し、自艦も主砲を斉射しつつ対空砲火の華を咲かせる。スペースコンバットシムの醍醐味、ここにありです。
その自由度の高さと着実に自勢力を拡大する様を指して、誰が呼んだか宇宙版『Mount & Blade』とも称される『X』シリーズ。その最新作『X4: Foundations』の第4弾大型DLC『X4: Kingdom End』を本稿ではご紹介していきます。
ちなみに過去のDLCに関する記事(第一弾・第二弾・第三弾)もありますので、興味のある方にはぜひ振り返っていただければ幸いです。
全主要種族が勢ぞろい!ボロン人との感動の再開を祝していざ乾杯!
本DLCではストーリーライン1つと、「旅立ち」と「女王の伝令」の2種類のスタートが追加されます。今回はスタート「旅立ち」から始めた場合の内容を紹介したいと思います。
というのも、「女王の伝令」は本DLCで追加されるシナリオをある程度以上進めた状態からの開始となるからです。せっかくの新DLCですからね。追加されたシナリオを1から味わいたいと思います。
本スタートでは、主人公は「言伝同盟」の一員として探査船ウェイファインダー号の船上に立った状態で物語が始まります。
言伝同盟はジャンプゲートの遮断以降、その影響を被った人々を助けるべく、主要種族の1つパラ二ドが主体となって設立した組織で、今なお遮断されているジャンプゲートの調査や復旧方法の研究、そしてメッセンジャードローンと呼ばれる特殊なドローンを使用した星系間の連絡手段の確立など、主に技術研究の側面で活動を行っている集団です。
今回、メッセンジャードローンが、数十年の時を経てボロンの母星系「キングダムエンド」からのメッセージを携えて帰還したことと、時を同じくして遮断中のジャンプゲートのひとつが活動開始の兆候を示したことから、この調査船団が該当のゲートに向けて派遣されることとなったのでした。
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調査船団を率いるのはパラ二ドのヌマンカレットさん。パラ二ドらしい高圧的な物言いが目につくのが玉に瑕ですが、重責あってのことと思ってここはスルーしましょう。
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プレイヤーはここで船団長より偵察機で先行偵察に出るよう指示を受けます。全く人使いの荒いことですな。
と、ここでゲートを抜けた先にある目的宙域「異端者の最期」で広域通信を受信しました。なになに、「当該宙域を航行中の艦船は至急退避されたし……?」
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キョロキョロしているうちに、巨大なステーションが突如出現します。既存『X4』プレイヤーには見慣れた独特の形状と甲高い声のステーションの主、そうステーションの正体はおなじみHQです。
『X4: Kingdom End』の導入以降、HQの獲得の流れが変更となります。具体的に言うと本DLCの導入以降、プレイヤーが「異端者の最期」に訪れた時点でHQが出現するようになります。このHQは初期状態で小・中型ドッキングモジュールが建造済みで、もちろん我らがHQの主ことボソ・タ氏もセットです。
言い換えれば今までのようにアノマリーに飛び込んたり、衛星やらプローブを配置したり、所有する船を反物質セルで吹き飛ばさなくても良くなったのです。随分手軽になったわけですね。「異端者の最期」自体も比較的交通の便の悪くないところです。
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これ以降ボソ・タからの通信が度々入るようになるので、時間があるときには顔を見せてあげればきっと安心してもらえるはずです。HQと一緒に管理という厄介事も押し付けられた気がしますが。とはいえ、自艦のアップグレード各種やテレポートの研究を行えるのは色々便利ですしね。
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その後、調査隊の本隊、そして不測の事態や新たな商売の予感に備えて集まった様々な種族の船と固唾を呑んで非稼働のジャンプゲートの調査を見守ることになりますが……状況が一転。なんと調査中にジャンプゲートが突如再起動してしまいます。
果たしてこれは偶然なのか、それともなんらかの存在の思し召しなのでしょうか?いずれにしても、誰にとっても未踏だったその先の宙域で初期調査を続けた一行は、ボロンの船の残骸を発見します。これはボロンがジャンプゲートの遮断という未曾有の危機を乗り切り、依然として健在である証左として受け取られ、調査船団一同が興奮に包まれることとなります。
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と、そこに近づく1機の偵察機の影。IFFによれば敵ではなさそうですが……。
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こうして自称稀代の冒険家こと、初めて出会うボソ・タ以外のボロンである、ニラ・チと合流することとなります。
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ニラ・チの話によれば、母星系から遮断されたボロンの一派は必要にかられボロン王家の相談役レダ・ウィを長として「漂泊の諸州」と称される暫定政権を樹立したそう。逆を言えば、先のジャンプゲートから繋がった一帯には「キングダムエンド」への道は存在していないということです。
とにかく、ニラ・チが相談役との会見の席を設けてくれるとのことなので、そのまま後をついていきます。なお今作のボロンは水に満たされたメカスーツを身にまとった姿で、船なども質量軽減のため空気で満たされているとのこと。結果として非ボロンの人々にとっては以前よりも交流しやすくなっているのかもしれません。
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しかし……困ったことに会見は破談となってしまいました。研究を目的とした前線基地の設営や非稼働のゲートの調査許可などを求めるヌマンカレットら調査船団サイドに対し、相談役レダ・ウィは様々な理由をつけて固く拒否したのです。その態度に業を煮やしたヌマンカレットはついに怒り、そのまま退席してしまいます。
このようにシナリオが続いていくわけですが、ここで筆者は致命的なミスを犯してしまいました。この時、本来のミッションガイドには「当事者間の調停を実施し、解決策を見出す」とあります。そして、時を同じくして追加サブミッションとして、まとまった量の船体部品や水などの物資をボロンに提供するというものが提示されたのです。
「ははーん、これはあれだな。連動しているに違いない!」と判断した筆者は、いそいそと輸送船団を動員し初めたのです。それでも結構まとまった量なので結構時間を要しました。で、見事ミッションを終わらせたのですがなんとメインシナリオの進展なし。
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先のものはあくまで自由なサブミッションであって、正解はガイドにそのまま従って船の各所にいる関係者から話を聞くだけでよかったのです。だってさ、あの相談役「我が一派の物資不足の深刻なるは、フリゲート1隻の建造にも事欠く有様」なんて思わせぶりなこと言うから!これだから口先だけの政治家ってのは信用ならんのです。
ということで、良いオチも付いたところで今回のシナリオ紹介はここまでです。見事相談役の罠にかかってしまいました。ボロン人の知性と穏やかさの影に隠された恐るべき側面を窺い知るよい機会だったと思います。
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なお、新規追加のボロン船関連についてですが、船もステーションもまるでウミホタルやヤコウチュウのようにキレイに青白く光るアニメーションが印象的ですね。武装もイオン系と呼ばれる対シールド性能に特化したものが多いのが特徴です。
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また、ボロンの武器には敵のエンジンやスラスターに機能不全を誘発させ機動力を削ぐ特殊効果が付与されているものも多いです。大半が対船体ダメージこそパッとしませんが、他武器との組み合わせにより追撃にも逃走にも応用できる戦術的なものとなっているのが特徴と言えます。
ただし注意点が1点。これらボロンの兵器、そしてシールドやエンジンなどのコンポーネントはすべてボロン船専用となっていて、他種族の艦船には搭載不可となっています。ボロンの兵器をスプリットの名機キメラ級に搭載しての高速戦闘や、アスガルド級戦艦に装備して動けない敵をアスガルド砲でぶち抜けたりしたら気持ちよかっただろうにと、少し残念に思います。
改良点多数あり!バージョン6.00に触れてみて
本DLCの配信に合わせて、本体のバージョンも6.00へと更新されます。この更新によりライティングや影の描写や物理エンジンの改良など、多くの改善・改良に加え新要素も多数追加されました。この先は、6.00へと触れてみた感想を一部お伝えしようと思います。
6.00でとくに印象的なのがセーブやロードなどの高速化です。筆者のPC環境ではかかる時間はおよそ半分へとなりました。ですが、ゲームの進行に合わせてセーブ容量が大きくなった場合にどうなるか、そもそもゲーム内時間に応じたゲーム自体の動作速度に改善があるのかも、本記事の執筆段階では確認できなかったのが残念ではありますね。
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まとめ
その自由度の高さと緻密なシミュレーション要素などがファンの心を掴んで離さない『X』シリーズ。その最新作『X4: Foundations』の大型DLCも早くも第4弾かと、SFファンとしては感慨深い思いでいっぱいです。
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何を隠そう筆者は『X』シリーズの大ファンで、人生初のPC自作もその実『X3: Albion Prelude』の為という筋金入りなのです。
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SFモノ、特にスペースコンバットシムといえば『Star Citizen』や『Elite』シリーズなどが挙げられますが、この『X』シリーズはこれらの作品と比較して、より複雑な経済要素や大規模な艦隊指揮などの独特の要素を有する1作です。
SF好きな方にはもちろんのこと、アクション要素が苦手という方でも経営者的視点でステーション運営のために数字とにらめっこという遊び方もできる、そのような作品となっています。
ぜひこの機会に、一度遊ばれてみてはいかがでしょうか?
スパくんのひとこと
SFファンならマストバイな大型DLC第4弾がいよいよ登場スパ。セーブやロードも高速化されて快適さもぐっと良くなったから、ぜひ一度お試しあれスパ!ってスパくんは禁制品じゃないスパ、投棄しないでスパァ~
タイトル:X4: Kingdom End
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年4月13日(予定)
記事執筆時の著者プレイ時間:6時間
価格:未定