弊衣破帽に下駄の歯鳴らし、腰に手ぬぐいぶら下げて――これぞ王道のバンカラスタイルの番長ですが、残念ながら筆者は本物を見かけたことがありません。筆者が物心ついた90年代には、こうした古式ゆかしい番長というのは絶滅危惧種を通り越してとうに絶滅したような存在で、ほとんどフィクションの世界の住人と言っても過言ではない存在でした。
ゲームで言うなら『くにおくんシリーズ』とか『喧嘩番長』とか、あとは無数の漫画作品でこそテーマとして描かれていますが、正直そういった後付けのイメージでしか想像できない代物なのです。しかしながら、聞く所によれば最近「東京卍リベンジャーズ」なる漫画が流行っているとかで、その他多くのヤンキー漫画が生み出されていることを鑑みれば、時代を超えて人々の心動かす何かは脈々と息づいているような気もします。

本日ご紹介するターンベースTRPG『BANCHOU TACTICS』は、その名の通り“番長”をテーマとしたゲームです。
サカエ高校、ナカムラ工業高校、ミナト高校の3つの不良校が支配権を巡って鎬を削るなか、ミナト高校のトップである鬼修羅王こと“キタガワ セイイチ”が卒業。結果として3校のパワーバランスが大きく変化しようとしています。

そのような情勢下で、ミナト高校の不良学生“アラシ タイガ”を主人公に3校の学生たちの様子を描くという筋書きとなっています。

ぱっと見でわかるようにドット絵は非常にキレイで、必殺技の分身や舞い上がる煙まで細かく描かれていて魅力的。戦闘シーンも移動と通常攻撃、加えて必殺技などを使い分けるシンプルで遊びやすいです。
しかし、シンプル過ぎるわけでもありません。「血液型」という形でのユニット同士の相性システムや、同じ敵を集中的に攻撃してコンボを稼いで気絶させたりと、ゲームプレイを奥深くする要素もあります。

そしてストーリーも、不良として喧嘩に明け暮れてその勢いでのし上がるという王道モノ。単純に強さこそ全ての不良の世界で、この先どうなるかが気になって仕方がない、そんな作品となっています。

絶対的覇者の不在により不穏な空気があちらこちらに漂い始めた作中世界、果たして主人公タイガの運命やいかに? ここから、SECRET CHARACTERとTSARAAMATAが開発し、Flyhigh Worksがパブリッシャーを担当するターンベースTRPG『BANCHOU TACTICS』のゲームプレイについて紹介していきます。
喧嘩に次ぐ喧嘩、強さが正義の世界で高みを目指せ!

まずはオプション設定から。日本語にもしっかり対応しています。ただ、戦闘速度などもあまり細かくは設定できませんし、項目自体も必要最低限ですね。

では続いて本編へ。いかにもな不良相手に話をしているキタガワ ケンジは、作中世界の3大不良校の1つミナト高校の不良グループ「鬼修羅」のリーダーです。鬼修羅王こと前リーダーのキタガワ セイイチを兄に持つ男で、兄の築いた地盤を受け継ぎつつもどうやら既に次の一手を考えている様子。
卓上の麻雀に乱雑に置かれたコンテナと、細かい描写がいい感じです。


場面は変わって、本作の主人公“アラシ タイガ”とその親友“アヤセ ハルオ”のやり取り。


と、そこでどうやらトラブルが。真面目そうな学生に絡む不良たち、まぁよくある光景ですね。

見過ごせないタイガたちはなし崩し的に喧嘩モードに突入することに……。
シンプルながら遊びやすい戦闘パート、擬音語やエフェクト満載の必殺技の漫画チックな描写も要注目!

戦闘パートは移動と通常攻撃、必殺技などを使い分けていくオーソドックスなターン制となっています。行動順表示や移動範囲、攻撃範囲などのマーカーも見やすくてGOODです。

また先述したように、ユニット相性に類するシステムとして血液型による強弱関係もあるほか、同一ユニットを集中的に攻撃することでコンボとなりダメージが増加し、また10コンボごとに気絶の状態異常が発動……というなかなかおもしろいシステムも存在しています。
ちなみにタイガは近接火力型、ハルオは遠距離支援型なので使い分けが鍵です。



戦闘終了後には、活躍に応じたEXP割り振りとステータス向上やショップでの買い物に使用できる“BP”が獲得できます。


かくしてあっさり不良を撃退して無事に二人を救出成功。絡まれていたのはチュウキョウ学院の“タケイ エミリ”と“ナカマ ヨシアキ”でした。しかし丁寧なお礼を述べるエミリ嬢に対し、不良校の生徒だから絡むなとなかなか辛辣な物言いのヨシアキ。
わからんでもない反応ながら、微妙にモヤモヤした気持ちで次の章へと進みます。

インターミッション画面ではステータス向上や装備の換装、またショップでの買い物ができます。

ステージクリアに獲得できるBPが通貨代わりとして色々重要ですから、使い道はよく考えたいところです。


とまぁ、このような具合で進んでいく本作。王道なストーリーに遊びやすいシンプルなゲームシステムと、非常にとっつきやすい作品となっています。

ユニット毎の差別化も十分で、前述のユニット相性によりキャラ育成に関してある程度計画性が求められたりするところも、よく練り込まれていると感じました。
ただ、少し気になるのがバグが散見される点です。セリフが突如タイ語になったり選択肢が空欄になったりといったことがチラホラありました。今後のアップデートを通じての改善は期待したいところです。
全体的に丁寧な作りが魅力的な本作。まだまだ暑い夏に不良たちの織りなす熱いドラマを満喫というのはいかがでしょうか?
スパくんのひとこと
遊びやすいシンプルなシステムと丁寧に描かれたグラフィック、そして王道のストーリーが魅力のターンベースTRPGスパ!不良たちが織りなす熱い青春ドラマから目が離せないスパ!おうおう、どこに目ぇつけて歩いとんじゃコラ!蒼白のスパの名前ぐらいは(ガスッ)…ごめんなさいスパ、これで勘弁してほしいスパァ
タイトル:BANCHOU TACTICS
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年8月11日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:1,980円