Game*Sparkレビュー:『スプリット・フィクション』“二人プレイ専用”でしか味わえない娯楽の確立。一度きりの「3Dプラットフォーマー映画」を誰と遊ぶ? | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『スプリット・フィクション』“二人プレイ専用”でしか味わえない娯楽の確立。一度きりの「3Dプラットフォーマー映画」を誰と遊ぶ?

『It Takes Two』以上の傑作に仕上がっています。

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Game*Sparkレビュー:『スプリット・フィクション』“二人プレイ専用”でしか味わえない娯楽の確立。一度きりの「3Dプラットフォーマー映画」を誰と遊ぶ?
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2人プレイ専用&画面分割という特殊な形態でありながら、プラットフォーマーアクションゲームとしての確かな品質と多彩な遊び、ミクロな世界を舞台にした幻想的なビジュアルなどで高い評価を受け、2021年のThe Game AwardsにてGOTYに輝いた『It Takes Two』というゲームがあります。

今回レビューする『スプリット・フィクション』は、そんな『It Takes Two』制作陣による最新作。2人プレイ専用&画面分割のプラットフォーマーアクションという基本はそのままに、「SF」と「ファンタジー」の二軸をテーマにすることで、よりやりたい放題な遊びに溢れた作品に仕上がっていました。前作を遊んだことがある人、遊んだことがない人どちらにもオススメできる傑作となっています。

なお、本稿はElectronic Artsから提供されたPC(Steam)版でのプレイを基に制作しています。

「SF」と「ファンタジー」の行き来で、とにかく飽きさせない

本作を遊ぶには、一緒に遊んでくれるもう一人のプレイヤーが必要です。ゲームをホストしてフレンドを招待したら、プレイヤーは「ミオ」と「ゾーイ」の二人の主人公のうちのどちらかを選んで遊ぶことになります。

ステージによって、ミオとゾーイはそれぞれ異なる能力を持つことになり、体験にも差が生まれますが、どちらも均等に見せ場が用意されているので、どちらを選んでも問題ありません。それぞれの能力を駆使し、お互いに協力しながらステージを進めていきます。

ミオとゾーイは、それぞれ「SF」と「ファンタジー」を得意とする新人の作家であり、自分の作品を出版するチャンスを得るために出版社に訪れます。そこで、自身の作品の世界を体験できるという機械に繋がれることになるのですが、状況を怪しんだミオは帰宅を申し出、出版社の社長と揉み合いに。事故でミオとゾーイは同じ機械に繋がれてしまい、SFとファンタジーの世界が交互に訪れる奇妙な状態になってしまいます。

前作『It Takes Two』の時点でも、多彩なテーマと遊びのステージが味わえる贅沢な体験になっていましたが、全体としてはおもちゃたちによるミクロな冒険という統一された世界観でした。今回は、SFとファンタジーを行き来するというテーマを最大限に活かし、さらに起伏に富んだ、プレイヤーを飽きさせない体験が作られています。

序盤に訪れることになるミオのSFの世界では、ミオとゾーイは「サイバーニンジャ」となり、悪のメガコーポとの戦いを繰り広げます。ミオは壁や天井に張り付き、刀を使ういかにも忍者らしい性能。ゾーイは電気のムチで物体を持ち上げたり、遠距離の敵を攻撃したりしてミオをサポートします。

お互いの得意不得意を活かしたステージデザインは前作同様見事な出来栄えで、導線もまったく過不足がありません。さらに同じステージであっても、ずっと生身のサイバーニンジャとしてプラットフォーマーアクションをするわけではなく、時にはバイクに乗り込んで壁へ天井へと疾走したり、空飛ぶクルマでビル群を避けるスリリングなアクションが展開されたり、横スクロールアクションへと変化したりと多彩な遊びがてんこ盛り。もちろんボス戦も十分すぎるぐらい用意され、それぞれ異なるギミックで楽しませてくれます。

というように、同じステージの中に様々な展開が用意されているため、一つのステージは比較的長めに作られています。「楽しいけど、流石にノンストップでギラギラなSF世界には少し疲れてきたな……」と、そんなタイミングを狙い撃ちするかのようにふと現れるのが新要素である「サイドストーリー」です。

各章を構成する大きなステージの中に、たまに別の世界へと通じるポータルが配置されており、コンパクトなサブのステージが楽しめるようになっています。

サイドストーリーはどれもコンセプトのわかりやすいステージになっており、メインのステージとは異なったアクションが楽しめます。さらに重要なのは、SFの世界での冒険中にはファンタジーのサイドストーリーが、ファンタジーの世界での冒険中にはSFのサイドストーリーが現れること。味変として完璧に機能しており、本作の起伏あふれる体験に大いに寄与する要素となっています。

サイドストーリーは無視して先に進むこともできますが、サイドストーリーだからといってメインステージと比べて遊びの質が落ちるということはないため、無視する理由はまずありません。

ミオのサイバーニンジャの物語が終われば、次はゾーイによるファンタジーの世界が待っています。ゾーイは「妖精」に、ミオは……「ゴリラ」に!?次はどんな冒険が待っているでしょうか。

唯一無二の「二人で遊ぶ映画」な体験

『スプリット・フィクション』の一番の魅力は、徹底的に「2人プレイ専用に特化されていること」にほかなりません。用意されているステージギミックや、能力、キャラクターたちの笑えるやり取りや派手な演出から生まれる楽しさは、友達2人で映画を観ている時の楽しさであるのと同時に、2人でゲームを遊んでいる時の楽しさでもあります。2人プレイだからこそのエンタメはなにかということを理解して実践しており、そこに全力投球しています。

ストーリーにも、ある種「二人で観ることを想定しているからこその浅さ」があると感じます。作品世界に入り込める謎の機械と、それを利用して作家のアイデアを盗もうとする出版社。彼らの“小説”が原作のはずなのにまったく読むのに適していないプロットの構造をしている各ステージなど、本作のリアリティラインはボロボロで、全体としてすごく緻密なストーリーに仕上がっているというわけではありません。

しかし、これもまた意図的なもののように感じます。本作は二人で声を掛け合いながら遊ぶアクションと、ツッコめるムービーシーンを交互に行き来するエンタメですから、緻密でシリアスな構造にして物語そのものに集中させすぎると、プレイヤー二人は口をつぐんでしまうため、性質上の齟齬になりえます。

そのため、シリアスで感傷的なシーンは比較的抑えめに、必要十分な量を終盤にかけて描く程度にとどめられています。もちろん、楽しいプラットフォーマーアクションのアイデアを落とし込むのに、リアリティを保持し続けるのは邪魔になりえるということも理由のひとつでしょう。

とはいえ、『It Takes Two』と比べれば、本作の主人公らは比較的温和で、彼女らに共感しやすいエピソードも描かれるため、「ひどい映画をみた」という感想にはならないように思います。


本作は性質上、「誰と遊ぶか」も重要なポイントになりえます。筆者の場合は発売前の製品をいただいてプレイしている関係上、一緒に遊んでも機密保持ができるゲームライターで、前作『It Takes Two』をプレイ済みの友人と遊びました。

本作は、3Dプラットフォーマーアクションを経験済みの人を想定している程度の、少し高めの難易度になっています。どんな場面でも直前ですぐにリトライできる仕様であるとはいえ、多少ゲームに慣れたプレイヤーと一緒に遊んだほうがいいかもしれません。

今回は、双方アクションゲームの経験は豊富だったため、スムーズに進めることができました。お互いにゲームに詳しいので、本作に仕掛けられているゲームネタやパロディなども拾うことができ、おそらく最大限に本作の楽しさを味わえたパターンだったと思います。

本作には、1本買うと友達にもう1本を送ることのできる「フレンドパス」が用意されています。普段ゲームを遊ぶ友達や、もっと仲良くなりたい人などにプレゼントして、唯一無二のエンタメを味わってみてください。


Game*Spark レビュー『スプリット・フィクション』PC(Steam/Epic Gamesストア/EA App)/PS5/Xbox Series X|S 2025年3月7日リリース

二人プレイ専用ならではのエンタメが詰まった傑作3Dプラットフォーマー

GOOD

  • 優れた導線と挙動を持つ高品質のプラットフォーマーアクション
  • 「SF」と「ファンタジー」の行き来でさらに起伏豊かな展開
  • 二人プレイ専用であることを活かしきった唯一無二のエンタメ

BAD

  • 大雑把なストーリーラインは少し人を選ぶかも

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ライター:お茶缶,編集:TAKAJO

ライター/ミンナニ ナイショダヨ お茶缶

任天堂タイトル中心に、けど色々手を出すゲーム好きな人。ベストゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。

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編集/いつも腹ペコです TAKAJO

Game*Spark編集部員。好きな映画は「ダイ・ハード」、好きなアメコミヒーローは「ナイトウィング」です。

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